残菊物語(溝口健二)を見る

溝口健二の映画を見るのは4作目。
歌舞伎役者尾上菊之助と身分違いのお徳の恋物語。
古いフイルムだけあって画面に雨が降るのはしかたない。
しかし、溝口の計算され尽くした構成と展開に見入ってしまう。

今回、特に気になったのは、効果音として使われている
「町の物売りの声」「お囃子」「梟の鳴き声」「寒修行の太鼓の音」
など今では聞くことがなくなった音のことである。

寒修行の太鼓とは、日蓮宗の団扇太鼓のことで
幼いころ、寒の時期の夜半に聞こえる太鼓の音に怯えたことを思い出す。

幼年期は神戸の街中に住んでいたが、
隣の屋敷の松の木に梟が飛んできて夜半になると鳴き
これまた、不安な気持ちになった。

いずれにせよ、「団扇太鼓の音」や「梟の声」は映画の中でも
人物の不安定な不安な心理を代弁していたように思う。

これらの効果音が日常にまだ存在していたのは
昭和30年代中ごろくらいまでではなかろうか。

この溝口映画もまた、
ストーリー、画面ともに美しい映画であった。






残菊物語
松竹ホームビデオ
2006-11-22


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