夫と妻の定年人生学(吉武輝子)

昭和62年に書かれた本であるが、いまでも十分通用する内容。

男の定年は、名刺から肩書が消える日である。
筆者の父は大手銀行の支店長であったが、退職後、鬱になり1年後に自殺する。
筆者がまだ24歳の時のこの事件が、この本を書くきっかけになったのかもしれないが、筆者の夫も、また近所の夫連中も退職し、ご近所界隈を不機嫌通りと呼ぶようになったのも、これと同じような状況が、退職した男とその妻に降りかかってきたからだ。



日本の雇用形態が職場中心であり、家庭での男と女の役割分担が当然のようになされてきた。

この本の書かれた時代と違い、今は女性の社会進出とか言われているが、実際は共稼ぎでないとやっていけない経済情勢にあるのではないだろうか。また、人生100年時代で現役80歳とか言われるが、実は働かざるを得ない事情にあるのではないか。




選別のために窓際族にされたり、出向を命じられたりして、肩身の狭い思いから辞表を出したり、鬱になったりしていては身が持たない。ここは楽してサラリーをもらえると、この期間を目いっぱい利用して、準備を整え、タイミングよくこちらから見切りをつける。


趣味はあくまで自分自身の心を豊かにする手立てに過ぎない。その趣味が誰かの役に立った時、はじめて社会活動へと転換する。



野心や欲望が活力になるのは40歳代までです。50代以降はこれらは諸悪の根源なんではないですか。第2の職業の特権は趣味的に働けることなんだと思います。おかげで他人と優しく付き合えるようになりました。

肩書や地位を振りかざしてきた人ほど、自分が弱者になるなんて夢想だにしていないから病みやすい。むしろ、こつこつ地味に働いてきた農家のおばあちゃんのほうが、あたりまえのこととして死を受け入れる。肩書や地位に振り回されると、つい生に執着してしまうから製紙感が身につかない。「よく死ぬことはよく生きる」ことなんだ。


旅は日常のを断ち切るための方法で、出口のない暗いトンネルに押し込められたようなときは、旅に出ると面白いほど抜け出す手立てが見つかる。


「おかえし」という最高の自己表現の手段をどのように今後の人生に生かしきるか。「よく死ぬことはよく生きることである」という人生最大のテーマを具現化する「おかえし」





夫と妻の定年人生学 (集英社文庫) - 吉武 輝子
夫と妻の定年人生学 (集英社文庫) - 吉武 輝子


この記事へのコメント